2010_03_26_インタビュー急接近「オバマ米大統領、広島訪問実現のカギは?」 ーまず鳩山首相が真珠湾へー(毎日新聞)

まず鳩山首相が真珠湾へ

̶̶05年から米大統領の被爆地・広島訪問を提唱していますね。当時は小泉純一郎首相、

ブッシュ米大統領で日米関係は戦後最良とも言われていました。提案の理由は?

◆1960年代から日米関係を取材してきて、つくづく日米間には先の戦争についてのけ

じめがついていないと感じていた。象徴的なのは、国家間で死者を弔う儀式をやっていな

いことだ。米国大統領は広島に来たことがなく、日本の首相はハワイ真珠湾に行っていな

い。問題意識を持ったのは、95年にドレスデン爆撃50年追悼行事で、ドイツの大統領

が、米英の制服トップを招き、和解の儀式を行ったのをテレビで見たことだ。私は戦争を

知っている最後の世代。戦前の間違いを繰り返さないため、死者を弔う儀式を行い、日米

同盟の基礎を作り直す必要があると思った。

̶̶戦前の日本が犯した間違いとは。

◆二つある。一つは米国という国を理解していなかったこと。もう一つは米中関係を無視

して戦争に突っ走ったことだ。米中関係は日本の黒船来航(1853年)の69年前に始ま

っていた。建国期の米国にとって、中国との貿易は大事な財源であり、両国は草の根でつ

ながっていた。

̶̶日本はすれ違いを続けてきたと。

◆そうです。米国は今では日本の政治、経済、音楽、野球と、すみずみまで浸透している

が、実は「水と油」くらい違う。なぜ銃乱射事件があっても銃砲規制がされないのか、日

本人にはなかなか理解できない。米国とは民主主義のためなら武力行使が正当化される国

だ。政府が万一、独裁政権になった時に人民が武装して、革命をもう1回やるくらいの決

意を込めてできたのが米国憲法だから、何年たっても銃はなくならない。

̶̶オバマ米大統領は「核なき世界」を訴え、広島訪問に意欲的と見られています。今年、

オバマ大統領の訪問は実現するでしょうか。◆ムードは高まってはいるが、なかなか簡単ではない。「核なき世界」で原爆投下の道義的

責任に触れ、期待が高まったが、米国にとっては核不拡散に重点があり、日本が思う以上

に難しい。米国内では、1月のマサチューセッツ州の連邦上院補選で民主党候補が負け、

苦境に立っている。また、中国や韓国からすると、米国大統領が広島を訪問するだけで、

日本が「加害者から被害者になってしまう」という懸念もある。

̶̶日米関係は米軍普天間飛行場の移設問題でぎくしゃくしていると言われます。大統領の

広島訪問を実現させるには、何が必要ですか。

◆鳩山由紀夫首相がまず真珠湾で花を手向け、「村山談話」プラスアルファの踏み込んだ演

説をすべきだ。日本の戦争責任を明快な言葉で語り、アジア全体の和解につなげれば、中

国、韓国なども納得させられる。自民党政権では村山談話どまりだったが、鳩山政権は近

隣諸国との歴史和解に率直なメッセージを送っており、現政権ならではの可能性を秘めて

いると思う。ただ、最大の前提は普天間問題が解決し日米関係が再スタートできる環境が

整うことだ。

̶̶日米関係とは、どうあるべきでしょうか。

◆ 日本と米国は異質な国だと理解したうえで、やはり米国との同盟は日本にとって不可欠

だと思う。米国の沖縄駐留によって、中国や韓国、北朝鮮までが安心するという、「公共財」

としての役割があることを理解すべきだ。米国ほど批判するのに簡単な国はないが、最後

の復元力はすごい国だ。米国は日本にとって必要だ。

【毎日新聞 大貫智子】

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